莱さんの小さい頃の話2
その大きな木の下に誰かがいる
少し遠くてよく見えないけど、家に帰るための道を聞くために私はそこに走った
木の下には…私と同じ年くらいの男の子がいた
とても綺麗な黒髪で、でも少しだけ紫がかっていて
…と言っても後ろ姿だけど
「…あの」
男の子が振り返る
…綺麗な朱色の瞳…
「やあ、こんにちは!」
優しげに微笑む彼
…顔に熱が集中していったのが自分でもわかる
「こ、こんにちは!姚 莱って言います!あのっ私ここに引っ越してきたばかりで、それで散歩してたら道に迷っちゃって…」
すると彼は少し驚いた表情をしていた
「莱ちゃんか…僕は鳳條院 澪よろしくね!へぇここに来たばっかりなんだ!ああ、それは災難だったね、姚さん…そう言えばお父さんが近々越してくる人がいるって言ってたな…そこかな…よし、僕が家まで送ってあげるよ!」
なんて優しいんだろう、初対面の私に丁寧に挨拶までしてくれて、しかも家まで送ってくれるなんて…素敵な子だなぁ
「あ、そういえば莱ちゃん、どうやってここに入ってきたの?ここは僕の家族しかしらない場所なんだけど…」
「小さいトンネル見つけて、それで気になって通ってみたら…」
と言ったら澪くんは
「また琉華がトンネル隠さずに帰ったんだな…はぁ…」
とため息をついていた
「ここ入っちゃいけない場所だった?ごめんね!勝手に入っちゃって」
私は焦った、家族しか知らない場所に他人の私が入り込むなんて、しかも初対面の私が、どうしようと悩んでいたら
「ううん、大丈夫だよ、弟の不注意だし!まあ、これは僕と君の秘密だよ」
僕とって言葉になんだかとても嬉しくなった、二人の秘密
正確には澪くん家族と私、だけど
それでも嬉しかった、恥ずかしいのを悟られないように私は話題を変えた
「そ、それにしてもこの花とても綺麗な朱色だね!!!」
本当に綺麗な朱色だった
「ありがとう!これは僕の誕生花なんだ、扶桑花って言うんだよ」
嬉しそうに彼は笑っていた
そして次の彼の言葉に私はなにもいえなくなった
「莱ちゃんの髪の色みたいに綺麗だよね」
…澪くんは天然なんだとその時わかった
多分澪くんは他の女の子にも言ってるんだろう、悪気なんて一切なく、ただ純粋に思ったことを口にしているんだろう